このたびの撮影にあたり — 田中 田

    普段はガラスのケースに入っている人形たちに生命感・生活感の表情を見たくなったので、
日本庭園をお借りしての撮影を試みました。
やはり思ったとおり様々な表情が出てきて、レンズを通して見ているといつまでも魅せられ、人形の感情
をも感じ、それぞれの人格(個性)をも感じ取ることが出来ました。
自然光下での表情の豊かさは、期待通り想像以上のものがありました。それはその時代の職人の卓越した技術が表現されていることによるもので、改めて先人の技に、頭が下がります。

   日米友情人形交流85周年・答礼人形≪ミス京都市≫里帰り記念として、海を渡った人形大使たちという冊子が2012年3月に、同志社大学・人文科学研究所から発刊されております。
昭和2年1927年アメリカの子供たちから約12000体の青い目の人形が贈られ、その感謝のしるしに日本から「黒い眼の人形大使」が、58体の答礼人形としてアメリカへ渡りました。これに始まる日米友情人形交流事業は、2012年に85周年を迎えました。
アメリカの美術館や博物館に今なお大切に保存されていますが、老朽化のため修復に里帰りもしています。   
今回、村上清子さんの解説を英文に訳しましたのは、英語圏でも見ていただき素晴らしい日本の人形を知っていただければという願いからです。

「市松人形」 パート1パート2 に分けましたのでご覧下さい。
尚、撮影した写真は約1000カットありましたが、ここに掲載した写真は村上清子さんに選んで頂きました。

≪ 日本の昔の抱き人形・市松人形 ≫ 解説 — 村上清子
 
   幕末、明治、大正時代の 《 三つ折れ人形 》 《 抱き人形 》 《 昭和初期の市松人形 》
これらの人形に作者の名が残っているのは、ほんの一握りです。多くが名もない職人たちの仕事でした。
昔の人形は作者名に拘る(こだわる)ものでは無いと私は思っています。
古い物は百年以上、昭和初期の市松人形も早や九十年の時が流れています。
 
   人形の命はやっぱりその顔にあります。じっと見つめているとそれぞれが味わい深く、静かに語りかけて来るような口もと、微笑んでいるような眼差し。その時代の職人が人形にこめた深い思いが伝わってきます。その心と技に魅了されます。
人形の着物はそれぞれの人形の持つ雰囲気 顔立ち等を考慮し人形が作られた時代に合わせ"縮緬(ちりめん)""錦紗(きんしゃ)"の古布を使いその殆どを私が仕立てました。人形の着物にも前幅 後ろ幅 おくみ等々決められた寸法があります。振袖に帯 帯揚げ 帯締 筥迫(はこせこ) 扇子 足袋を揃え正装に整え着附けました
 
   今回、写真家 田中 田さんの発案で人形たちを自然の中に連れ出して撮影すると言う全く新しい試みでした。私は市松人形のコレクターとして二十数年来たくさんの写真を見てきましたが、自然の中で緑に囲まれて佇む市松人形の写真は初めてで他に類例のないものだと思います。京都市伏見区の旧家の庭園をお借り致しました。
写真家 田中 田 さんの面目躍如!!
並外れた集中力、被写体との会話、一体感、洗練されたアングルの切り取り、そして息をひそめたシャッターチャンス~~私は撮影に同行させて頂いて、田中 田さんの高度な写真撮影技術とセンスに本当に感動いたしました。
 
   田中 田さんに写しと撮られた人形たちは、自然と人間の共生に通じるような自然と人形の一体感のある素晴らしい世界を作り出しました
人形たちは何の違和感もなく、沈黙を破り息をふき返し見事に生命を得たかのように生き生きとしたさまざまな美しい表情を自然の中で見せてくれました。
その表情はとても新鮮で優しさ愛らしさに満ちています。いとしく思います。

Kiyoko Murakami’s Antique Japanese Dolls, As Photographed by Den Tanaka

Ms. Murakami has been collecting antique Japanese dolls for over 20 years. The earliest were created around 90 years ago, and many date over a 100 years or more.

In addition to caring for the dolls themselves, Ms. Murakami uses authentic antique Japanese fabric to make the dolls’ "kimono" and various attachments and ornaments, including "obi", "obiage", "obijime", "hakoseko", "sensu", and "tabi", in order to outfit them in a style appropriate to their period.

Ms. Murakami believes a doll’s inner story is told in its facial expression. She believes if you gaze quietly at the dolls, you will find each of them charming and beguiling, as if they were about to greet you with smiling eyes in a friendly and familiar way. Through this gentle glance you will be able to recognize the deep thought and warmth the original craftsmen put into each one.

Over the long course of collecting these Japanese "Ichimatsu" dolls, she has seen many photos of them as taken by various photographers. Those pictures are usually set against a plain wall or background. Thus, she reacted with mild surprise when Mr. Tanaka approached her with the unusual idea of placing the figures outside, amid the natural world. No doubt, the possibility of rain or dirt damaging the dolls must have also crossed her mind. On the other hand, for his part, Mr. Tanaka worried that working in broad daylight would cause problems during the composition of the photographs. But, despite these concerns over finding suitable and safe conditions, Mr. Tanaka was certain that removing the dolls from their glass enclosures to an outdoor setting was the best way to allow their beautiful faces and outward appearance to become fully animated by their inner life.

Ms. Murakami and Mr. Tanaka were very fortunate to receive the kind permission of Mr. O. and Mr. Ohashi of Kyoto to use the beautiful Japanese gardens surrounding their homes for the shoot. Mr. Tanaka said of that day, "As I had hoped, observing them in the garden the dolls’ vivid individual expressions took effect on me, so that as I continued to watch they came to life before my eyes. Thus I was able to feel and understand the personality of each one. I believe this phenomenon came from a power instilled in the dolls by the exceptional skill of the craftsmen of the period. I deeply respect the artistry of these Masters."

When she saw the final portraits, Ms. Murakami reacted equally effusively in her delight. "Den Tanaka is a truly great photographer. His extreme concentration, his communication with the figures, his communion with the environment, and his artful choice of the right angle and moment to shoot, all greatly impressed me as I watched him. Through these pictures he has created a wonderful universe uniting my dolls with the natural world. They did not seem to show any discomfort and expressed themselves beautifully after breaking their long silence. Their expressions are fresh and filled with gentility and sweetness. They are so very lovable."

◆大橋家 庭園﹙苔涼庭﹚について — 京都市の登録文化財
今回の撮影でお世話になりましたのは大橋家庭園と、個人のお宅なので公開されていませんがO氏邸
のお庭です。
大橋家庭園は京都市伏見区にあるお稲荷さんの北側に位置し、 明治末から当家四代前の大橋仁兵衛が親しかった七代目小川治兵衛﹙植地﹚氏の監修を得て、珍しい十二基の石灯篭や伽藍石はじめ多くの庭石を配し座敷からの眺めを楽しむ路地風の庭。
特筆すべきは、二か所にある水琴窟、それはまるで水の音色が奏でるのオーケストラのようでした。

O氏邸と大橋家の皆様のご協力に心から御礼申し上げます。

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